神鳥の卵 第25話


ベッドには、すやすやと眠るルルーシュ。
今までの服はもう着れないからと、C.C.のシャツを着せたためぶかぶかだ。咲世子が急ぎ子供服を買い揃えてきたが・・・まあ、ルルーシュは怒るかもしれないが背に腹は代えられない・・・というものばかりだった。
C.C.の服は仕方ないからと着ているが、これに関しては確実にごねる。いろいろと面倒になるに違いない。何より今はぐっすり寝ている。寝た子を起こすのはバカがすることだと、着替えさせるのは後にして、集合した面々にC.C.は話し始めた。
ジェレミアとアーニャも緊急招集に答え、この場に来ていた。
まずは、ルルーシュが成長しなかった話。
子供の成長をよく理解していないスザクとジェレミア、アーニャは今まで気にしていなかった。カレンは扇とヴィレッタの子供を見ていたし、ロイドとセシルは子供の成長に関してはルルーシュのために詳しく調べていた。咲世子は子供の成長を理解していたし、ナナリーは変わらない兄の姿に不安を感じていた。
世間から切り離され、時間の感覚もわからなくなる生活をしている者たちばかりだが、ほとんどのメンバーがこの異常に気づいていたことに、C.C.はわずかに安堵した。

「では、お兄様は成長のために、卵に還る必要があるということですか?」
「今回だけなのか、次もそうなのかはわからないが、もし今後もルルーシュが全く成長しないなら、次に成長するときにも、卵に還る可能性は高い」

なにせこれは未知の存在だ。
また同じことが起きるかどうか断言など出来ない。
だが、可能性はある。

「ルルーシュの体の成長と共に背中の羽も大きくなっている。今まで以上に隠すのは困難だろうな」
「でもそれは大丈夫じゃない?ほら、コスプレみたいな感じにしたり、リュックで隠したり出来ない?」

リュックの背中の部分を加工して、羽を中に隠してしまえばそうそうばれないのでは?と、カレンは提案した。最近の子供リュックは動物などの形になっていたり、羽をつけたりしているものがあるから、うまくやれば問題はないだろう。
赤ん坊のときは病気の面なども考えて外出しなかったが、6歳にまで成長したなら多少の外出も可能になるはずだ。
ルルーシュがいる、しかも羽根つきという異常になれきった面々は、ルルーシュの成長に驚きはしたものの、さっさと適応していた。

「それでも人目は気になるのではないか?やはりルルーシュ様は、我々が引き取るべきだと思う」

ジェレミアの屋敷は大きいし、農園もあるため土地も広い。
あそこなら自然の中で、のびのびとルルーシュを育てることが可能なのだと、ジェレミアは力説した。これは前から何度もジェレミアは言っていたが、今後のことを考えれば、人の少ない場所がいいのかもしれない。このまま成長を続けたとき、羽の大きさは今以上に問題になる。

「駄目!絶対っ駄目!僕が会えなくなる!」

ルルーシュは僕のところに来たんだ!離れない!!といつもどおりの主張をするスザク。それに同意するのはナナリーで、ここだから頻繁に会いにこれるのにジェレミアのところに行かれてしまっては会うのが困難になる。電話など記録の残る形で連絡をとりあうわけにも行かない。カレンももちろん拒否。ロイドとセシルも、スザクが動けないということは当然動けないから、今後ルルーシュの体になにかあってもすぐに見ることができなくなる。
問題がないのは咲世子とC.C.だけだ。

「スザクはともかく、ナナリーを悲しませるのは問題だな」

C.C.が言えば、たしかにとジェレミアはうなった。

「僕はともかくってひどくないか?」

スザクの文句は、全員とりあえず無視した。

「だが、ジェレミアの意見はもっともだ。ルルーシュをいつまでもこの狭い地下室に閉じ込めておくのは問題がある」

ナナリーとスザクが側にいる環境はルルーシュの理想だとしても、体が健康に育つとは思えない。何よりこの部屋にこれだけの人数が集まると非常に狭い。
元々、ゼロであるスザクが1人で住む前提で用意された場所だ。
咲世子を含め4人でも手狭だったのに、今はそれ以上の人数になったのだから、新たな活動拠点は必要だろう。ジェレミアの果樹園は別としてだ。

「つまり、とし からはなれていて、つごうのいい ばしょがほしい。ということか?」

かわいらしい声が聞こえてきて、皆の視線がそちらに向く。
そこには、毛布を頭からかぶり引きずって歩いているルルーシュがいた。なんで毛布?と思ったが着ているのはC.C.のシャツだから、恥ずかしいのだ。
体が成長したことで、話すことが出来るようになったルルーシュは、「ふく は ないか?」と聞いてきた。咲世子は早速服を手渡したが、それを見てルルーシュは顔をひきつらせた。
まあ当然だ。可愛らしそれらはおそらく、間違いなく、確実に女の子の服だ。

「スカートが無いだけましだと思え」

以前の事があるから、選んだのが咲世子で、急なことだから咲世子以外買いに行けなかったのだと気づいたルルーシュは渋々服に袖を通した。
・・・かわいい。
赤ちゃんルルーシュも可愛かったが、幼児ルルーシュも可愛い。
背中部分はすでに直しが入っていたため、問題なく羽も外に出せた。写真を撮ろうとする面々を威嚇していたルルーシュだが「お兄様、とても可愛いです。まるでお人形みたい」といえば、まんざらでもない顔をした。さすがナナリーだ。ルルーシュはナナリーの隣に用意された椅子に座ると口を開いた。

「こうがいに ちょうどいい ばしょがある」
「では決定だな」

スザクが文句を言ったが、我らが王が決めたのだし、あのルルーシュがナナリーと離れるはずがないからなんとかするんだろうと理解した面々はあっさり受け入れた。

24話
26話